スウィート・アラカルト

食後は別腹クレープ!

ずっと、輝きを待ってた 〜μ'sと私とラブライブ!フェス〜

久しぶりに会ったらどうなるのかな、とずっと思っていた。

 

μ’sは、私にとってはじめて好きになった「アイドル」で。

同時に、活動休止にはじめて立ち合った「アイドル」でもあった。

 

 

2013年12月。まだ学生だった私は、友人のすすめでスクフェスを始めた。そもそもゲームというものが苦手であるため、スクフェスは初めて触れたアプリゲーでもあった。慣れない音ゲーに四苦八苦しつつも、全体のストーリーが気になりはじめた私は、アニメを見ることにした。当時製作されていたラブライブ!のTVアニメは一期のみ。最初は軽い気持ちで見ていたが、3話「ファーストライブ」にて衝撃を受けることになる。「所詮ものがたりなのだから、ファーストライブなんて成功するに決まっている」そう思っていた私は、幕が開いた瞬間の光景に絶句した。観客、0人。「現実なんて甘くない」と涙する主人公。それでも、なんとか滑り込んできたわずかな観客に向けて全力のパフォーマンスを披露する3人。ここで完全にラブライブ!の世界に取り込まれた私は、アニメを一気見した。

特に好きな話は、4話の「まきりんぱな」である。アイドルへの想いは人一倍だが、引っ込み思案な自分にはできないと諦めてしまっていた花陽。幼い頃からかわれた経験から、かわいさとは縁遠いと思い込んでいた凛。音楽が大好きだが、医学部に進む自分にこれ以上の道は無いと心を閉ざしていた真姫。凛と真姫に背中を押され、せいいっぱい声を振り絞る花陽の姿を見て、まきりんぱなの関係性が大好きになった。人生で初めての「推し」だった。

こうしてラブライブ!にのめり込んだ私は、声優ライブ(μ's →NEXT LoveLive! 2014 〜ENDLESS PARADE〜、通称μ's 4th)が間近に行われることを知る。根っからの二次元オタクであった私は声優自身にそこまで興味はなかったのだが、試しに過去のライブの試聴動画を見てみたところ、新たな衝撃を受けることになる。

youtu.be

声優はあくまで声優であり、いわゆる“キャラクター”自身ではない。その認識ははっきりとあったのだが、確かに鳥肌が立った。歌やダンスに対して鳥肌が立つ、という経験は初めてのことであった。また、全員年上だということにも驚いた。「年上の女性たちがきらきら輝いている」、この事実は自分の中で大きな支えとなっていった。あまりにも直前だったため4thには参加できなかったが、次のライブには是非参加したいとの思いで、サイリウムやコールの文化を学んでいった。

 

2014年4月。社会人となり不安でいっぱいの私にとって、「ラブライブ!をリアタイできる」という事実は大きな心の支えだった。二期の放映開始である。見るたび一喜一憂し、SNSで様々な考察を探る日々。大好きな新曲であったり、どうしても許せない展開であったり。様々な感情と思い出がどんどん溜まっていった。初任給でアニメ円盤を予約しながら、まさかこんなに心揺り動かされるものに出会えるとは、と不思議な気持ちに浸っていた。

二期が終わったあとも、はじめて尽くしの日々だった。ランティス祭りで出会えたμ'sにはしゃぎすぎてしまい、初の野外フェスにのっけからバテてしまったり。5thライブでは始発電車に乗ってライビュ会場に向かい、寒空の中物販に並んだり。劇場版に関しては、「映画館に通う」という経験をはじめてすることになった。公開初日に横浜で劇場版を見た後、その足でファンミ幕張に向かった思い出がある。また、ファンミ広島の際にははじめて中国地方に足を運ぶことになった。ぷわぷわーお!が初披露された時の歓声を今でも忘れることができない。

こうしてμ'sとの日々を過ごしてきた私であったが、いくつかの懸念が頭を過っていた。まず、絢瀬絵里役の南條愛乃さんが膝の不調によりパフォーマンスできなくなってしまったこと。この頃にはMステや紅白にも出演が決まっていたμ'sであったが、いずれも穴の空いた形での出演となった。次に、劇場版が終わってしまったことにより、次の展開が見えないこと。最後に、ラブライブ!サンシャイン!!という別プロジェクトが立ち上がったこと。サンシャイン!!も今となっては大好きなコンテンツであるが、当時は不安でいっぱいだった。もしかしたらμ'sはそろそろ潮時を迎えてしまうのかもしれない──そう思い始めたころ、とあるリークがSNSを駆け巡り始めた。そして2015年12月5日。公式から「東京ドームでのライブをもってμ's活動休止」の報を伝えられることになる。

察していたこととはいえ、その事実は大変ショックであった。このニュースの際、ちょうど同胞の友人達と共に過ごしていたのだが、全員呆然としていた。「一体我々はこれから何を心の支えとしていけばいいのか」名駅地下のカフェで議論を交わしていたのを覚えている。

 

ラブライブ!μ's Final LoveLive!〜μ’sic Forever♪♪♪♪♪♪♪♪♪〜」。μ'sにとって初めての東京ドームであり、活動休止前最後のライブ。もちろん現地に行きたかったのだが、仕事の都合上、年度末・年度始めの日程(3月31日・4月1日)は大変厳しいものであった。そのため、翌日4月2日のディレイビューイングでの参戦となった。まっさらな気持ちでライブを迎えるため、3月31日からネット断ちをし、私は映画館へ向かった。

ざわざわした中はじまるOPアニメ。「いつものBGM」が流れ始めたところで、もうダメだった。

始まりの朝(メインテーマ)

始まりの朝(メインテーマ)

  • provided courtesy of iTunes

グレードアップした衣装での1stシングル(僕らのLIVE 君とのLIFE)、膝が全快ではない中 部分部分でパフォーマンスしてくださった南條愛乃さん、内田彩さんの涙ながらの最初のMC。いろんな思い出と現状がごちゃまぜになって、どばっと感情が溢れてきた。でも悲しいだけじゃなくて、とびきり楽しくて。もう三次元化されないであろうと思っていた衣装の再現がとってもかわいかったり、久々にパフォーマンスを見られた曲があったり、一緒に踊る曲がたくさんあったり。中でも私は、「Hello,星を数えて」が印象深かった。

youtu.be (27:30~)

Hello,星を数えて」は劇場版で真姫・凛・花陽が歌った曲である。まきりんぱな推しとしては待望の、初の1年生曲。ふんわり袖シャツにサスペンダースカート。いつもと違うポンパドールに、ちょこんと乗ったシルクハット。そんなキュートな姿の凛を中心に、NYの街中、ミュージカルを繰り広げる三人。劇場版のショートバージョンの時点で大好きだったが、このライブのフルバージョンで好き度が跳ね上がった。まず、衣装。凛ちゃん役の飯田里穂さんの衣装再現はもちろんのこと、真姫ちゃん役のPileさんと花陽ちゃん役の久保ユリカさんにも新たなデザインの衣装が追加されたことに感動した。1番はアニメ通りのコート姿、2番はそのコートを脱いで、凛ちゃんとおそろいの衣装になるのである。同じく劇場版で披露された3年生曲のおそろい衣装に羨望を抱いていたため、とても嬉しかった。また、ただのおそろいではなく、真姫ちゃんと花陽ちゃんはパンツスタイルであったため、凛ちゃんをエスコートするような形になっていたのにもグッと来た。次に、舞台セット。街灯や看板、テーブルなどが劇場版と同様に配置され、ちゃんと街中のようなステージになっていた。最後に、演出。これについてはなんといってもラスサビである。3人が顔を合わせて「楽しくなっちゃうね!!!」とはしゃぐ姿に胸がぎゅっとなった。この3人が同学年としてわちゃわちゃしているのが何よりも大好きなのだ。まきりんぱな推しで良かったと心の底から思った瞬間だった。

そして、アンコール。最後のMCで声優さんたちがぼろぼろに泣く中、私もぼろぼろに泣いていた。新田恵海さんの「私たちはずっとμ'sです」という発言、MOMENT RINGの「だって離れたりできるはずないんだよ」でぎゅっと集まる9人、本当に最後の曲となった「僕たちはひとつの光」。あんなに泣いたライブは、後にも先にもない。それほどにμ'sの存在は自分の中で大きかったのだ。

 

時は流れ、2019年5月30日。μ'sを通して「アイドル」そのものが大好きになった私は、二次三次問わず様々なアイドルを追いかけていた。そんな中舞い込んできた、「ラブライブ!フェス」の告知。正直「μ's復活」はもっと先だと思っていたため最初は戸惑った。しかし、耳を澄ましてみるとカチコチと音が聞こえた。心の奥にしまい込んでいたμ'sへの思いが、また新たに時を刻み始めたのだ。

こうして迎えた、年明けのラブライブ!フェス。ライブビューイング参戦ではあったが、どきどきは止まなかった。μ'sとふたたび会ったとき、自分は一体どうなってしまうのだろう。μ's声優の各々の活動(内田彩さんのソロアーティスト活動、三森すずこさん出演の少女☆歌劇 レヴュースタァライトなど)を追ってはいたが、全員が揃った時の反応は未知であった。会場との中継がはじまり、聞こえてきたのはμ'sのシングル曲。開場前BGMにも関わらず、盛り上がりは既に最高潮。自分の胸の高鳴りも最高潮。目頭が熱くなったまさにその時、幕が上がった。

まさかの未体験HORIZONからはじまり、虹ヶ咲、Saint SnowAqoursと繋がっていったバトン。純粋な楽しさに開場前の緊張が一気に解けてしまったが、ディスプレイの「μ's」の文字に改めて身を引き締めた。納得のトリ。「いつものBGM」と共にぱぱっと映し出されるキャスト紹介。「僕らのLIVE 君とのLIFE」のイントロが流れ始め、ついにμ'sが現れた。

率直な感想を述べると、μ'sは驚くほど変わっていなかった。あまりにもあの時の輝きそのままで。そのためか、真っ先にこみ上げてきたのは涙よりも喜びだった。ひたすらにμ'sを追いかけていたあの頃に、一瞬でタイムワープしたようだった。自己紹介のコール&レスポンス、「僕らは今のなかで」や「No brand girls」の振りコピ、そして「Snow halation」のライトチェンジ。そのどれもが、とてもとても楽しかった。

youtu.be (2:33~)

Final Liveからの4年間、いろんなことがあった。どうしたって癒えない悲しみも味わってきた。でも今、このタイミングで、μ'sと再会できたことは大きな救いになった。いくつになっても輝きを放つ彼女たちへの憧れは、はじめてそのパフォーマンスを見た時から変わっていない。

気づけば私も、Final Liveの頃のμ'sと同世代だ。まだまだ彼女たちには程遠いけれど、この想いを投げ出すことはしたくないな、と改めて思った。

 

だから今日も私は、輝きに手を伸ばす。