"あやふやな未来"を、対話(ダイアローグ)しよう ~DIALOGUE+と可能性の話
その動画を初めて見た時の感想は、「ポニキャ気合入ってんな……」だった。
楽曲制作陣がえらいことになっている、とTLに流れてきた試聴動画。
作詞作曲:田淵智也、編曲:田中秀和。そんな組み合わせアリかよ……と開いたところ「そんじゃ手始めに革命しましょ、ご準備!」「超絶綽綽手を引いてあげましょう!」と田淵節全開の歌詞に、田中さん編曲ならではのおもちゃ箱をひっくり返したような複雑なわちゃわちゃ感。ポニキャのオタク(Sexy Zone*1 、久保ユリカ、スタァライト九九組)として、かなり力を入れているグループなのだなと感じた。メンバーについてはナナシスの荒木レナ役である飯塚麻結さんしか知らなかったが、配信が始まった際には早速ダウンロードし、リピートすることとなった。
次にリリースされた、ミニアルバム「DREAMY-LOGUE」。
こちらも収録曲の楽曲制作陣に圧倒された。赤い公園*2、パスピエ*3、fhána*4、そして三森すずこさんが作詞で携わっていることに驚いた(パジャマ de パーティー)。こちらのアルバムも早速、ヘビロテプレイリストに加わることとなった。
デビュー時から楽曲は聴き続けていたDIALOGUE+。しかし、ライブを見たり各々のメンバーについて掘り下げることはしなかった。この姿勢が変わったのが、DIALOGUE+PARTY 2021「ぼくたちの現在地」である。
➕新イベント開催決定➕
— DIALOGUE+公式@9/1アルバム発売 (@DIALOGUE_staff) 2020年11月22日
DIALOGUE+PARTY2021
🎪ぼくたちの現在地🎪
日程: 2021年1月10日(日)
全曲パフォーマンス編、全力新年会編、打ち上げ新年会編の3部制🎍🇯🇵
配信もあります📺
現地観覧チケットの先行抽選受付がスタートしました🎟
👇詳細はこちら #ダイアローグhttps://t.co/zgyIB9rCqx pic.twitter.com/b7uyYLoh9W
1部の全曲パフォーマンス編が気になるな、と目を通していたらまさかの配信チケット1000円。コロナ禍で様々な配信ライブを見ていた私だったが、この価格は破格である。好きな曲だらけなのは間違いないしな、と予定を空けた。
こうしてDIALOGUE+のパフォーマンスを初めてちゃんと見ることになったのだが、想像以上のクオリティによるフォーメーションダンスが繰り広げられており驚いた。さらに振付のリズムの取り方が気持ち良く、かつポーズがどれも印象深い(「はじめてのかくめい!」の0を作りながら蹴り上げる振付、「夏の花火と君と青」の盆踊りをうまく取り入れた手の動き、「人生イージー?」の+(プラス)を意識した振付など)。1時間で全曲披露するために次々と繰り出されていくパフォーマンスに圧倒されつつ、いつの間にかひとりのメンバーに注目していることに気がついた。すらりと細長い手足。ポイントメイクの映える白い肌に困り眉。聴かせどころでバチっとソロを決める力強い歌声。衣装の示すメンバーカラーを元にWikipediaを探る。
「さっぴ」こと宮原颯希さんとの出会いである。なんで今まで認識してなかったんだ!?と思うくらいに目を惹かれた。笑顔はもちろん、「Domestic Force!!」で眉を顰める表情にグッとなる。また、DIALOGUE+のエースである内山悠里菜さんとのセンターボーカル曲、「謎解きはキスのあとで」。謎が絡まるラブソングと傘を使ったパフォーマンス、どちらも大好きな私としては最高の楽曲であった。向かい合った二人が傘に隠れ、口づけているかのように見せる振付も堪らない。CD未収録の楽曲*5 であったため、暫く亡霊になってしまった。
そしてライブタイトル「ぼくたちの現在地」に繋がる新曲、「あやふわアスタリスク」。
これまでとはひと味違う、幻想的で浮遊感のある楽曲。グループに対してカラフルな印象を抱いていたため、黒基調のゴシックなMV衣装もなんだか新鮮で。カノンダンスやサビでの足の捌き方も美しいものであった。楽曲だけではなくパフォーマンスも含めDIALOGUE+に大きな可能性を感じた私は、きちんと活動を追うことに決めた。
豊富なDance Practice動画を眺めながら振付師の沢口かなみ先生に感謝を捧げ、メンバーのゆるいテンションのフリートに癒される日々を過ごしていた私だったが、新曲で更に心を奪われることになる。
4月6日にMV公開された4thシングル、「おもいでしりとり」。
「あやふわアスタリスク」と対になるような、白を基調としたノスタルジックなMV衣装。サビで紡がれるセリフとダンスの"しりとり"。大変かわいい、推しの三つ編みおさげと「好きです。」。素敵尽くしの中で、一番胸を打ったのはその歌詞であった。
あっちを立てりゃきっと こっちが立たない
フラフラ迷い込んで結局 臆病で意地っ張りだ
おもいでしりとり DIALOGUE+
生活が続いてって 隙間でこぼれ落ちた
この光はなんだっけ 名前を付けなくちゃ
おもいでしりとり DIALOGUE+
惹かれている事実とバランスを取るかのように、あえて背を向けてしまうような偏屈な気持ち。はっきりとした名前をつけることに悩んでしまうような、ふわふわとした想い。「おもいでしりとり」と同じ田淵さん作詞による、UNISON SQUARE GARDENの「8月、昼中の流れ星と飛行機雲」が思い浮かんだ。
君にたどり着くまで後どれくらいかかるんだろう
私は、ごめん、ふわふわ わがままだな
8月、昼中の流れ星と飛行機雲 UNISON SQUARE GARDEN
曲がりくねった道のりだったけどちゃんとさ 今はちゃんとさ ほらね
君へと 向かってる…はず
8月、昼中の流れ星と飛行機雲 UNISON SQUARE GARDEN
「うまく言葉にできないふわふわとした想い」については、先述の「あやふわアスタリスク」にも書かれている。
”短い言葉で心を表せ"
解答用紙の空欄たち
あやふわアスタリスク DIALOGUE+
僕らがいる現在地は まだ あやふわふや
切ない胸の温度は まだ あやふわふや
あやふわアスタリスク DIALOGUE+
田淵さんの紡ぐ 「曖昧な心情に揺れるこころ」は、なぜこんなにも俊逸なのだろう。他の曲についても調査してみたところ、全く同じフレーズが二つの曲に見られた。
パンドラの箱をノックして "あやふやな未来"を取り出してそこに
"私たち"を×(かけ)て=最強、といたします!
大冒険をよろしく DIALOGUE+
当たり前を数えよう
あやふやな未来だけど 楽しいことばっかりだ
あたりまえだから DIALOGUE+
「あやふやな未来」。こちらも曖昧でふわふわとした想いを感じるフレーズだ。しかし、書かれているのは単なる悲観ではない。そのあやふやさを、未知なる可能性に繋げている。胸にストンと落ちる感覚があった。
私はいつだって臆病で、先の見えないことに不安を感じてばかりいる。故に遠回りしてしまったり、目を瞑ってしまったり。そんな弱い思いも肯定したうえで、勇気を与えてもらったような気がしたのだ。
そして、「おもいでしりとり」発売後の定期公演。
生バンドをバックにノンストップで駆け抜けた、全3回のライブ。「フラフラ」というライブタイトルの下、披露される新曲たち。まさに未知なる可能性を感じる公演であった。
9月1日に1stフルアルバムの発売を控えているDIALOGUE+。
10月からは、こちらを引っ提げた初のライブツアーも決定している。まだまだ"あやふやな未来"に満ちた世の中であるが、次こそは現地参戦したい。
ひたむきに進む彼女たちの、新たな一面を見られることを祈って。